Content コンテンツ

「英語が話せる=英語ができる」ではない?BICSとCALPから考える本質的な英語力とは

BICSとCALPとは?

**BICS(Basic Interpersonal Communicative Skills)**は、日常会話で使われる基本的な英語力のことです。
たとえば:
“Hi! How are you?”

“I like soccer.”

“Let’s go to the park!”
といったような、表情やジェスチャー、状況に支えられたコミュニケーション力がBICSです。

一方、**CALP(Cognitive Academic Language Proficiency)**は、教科学習や論理的思考を支えるアカデミックな言語能力を指します。
こちらは以下のような抽象的・論理的な表現を含みます:
“The government should implement stricter regulations.”

“There is a significant difference between evaporation and condensation.”

“Although the experiment failed, it provided useful data.”

BICSとCALPの定義

言語学者ジム・カミンズが提唱したこの二つの概念は、英語学習者の「話せるのに理解できない」「読めるのに使えない」といったギャップを説明するうえで非常に重要です。

BICS (Basic Interpersonal Communicative Skills)
日常生活で使われる「表面的な英語力」。挨拶、自己紹介、買い物、友達との会話などが含まれます。自然な環境にいれば半年~2年で身につくとも言われます。

CALP (Cognitive Academic Language Proficiency)
学校の授業やビジネス、論理的思考を伴う内容を理解・表現するための「学術的・抽象的な言語能力」。これは意識的なトレーニングと語彙力の強化が必要で、習得には5~7年かかることもあります。


CALPを伸ばすには意識的な語彙学習が必要

教室で使う英語、特に抽象的な語彙や論理的構文は、日常会話だけでは身につきません。CALPは放っておけば自然と育つようなものではなく、意図的に、体系的に鍛える必要があるのです。

私のもとには、海外のインターナショナルスクールに通いながらも、CALPの不足によって学習面で苦労している生徒さんが多く通ってきます。その多くが「会話はできるのに、リーディングやライティングが苦手」「授業内容を英語で理解するのが難しい」といった悩みを抱えています。

日本の英会話教育はBICS中心になりがち

日本国内の英会話教室や学校英語では、どうしてもBICS(Basic Interpersonal Communicative Skills)=日常会話力の習得ばかりが重視されがちです。
「英語で自己紹介をしよう」「買い物ロールプレイをしよう」といった活動は、確かに英語への親しみや自信を育む面では有効です。
しかし、それだけでは学術的・抽象的な英語運用力(CALP)を養うには不十分です。

しかもこの傾向は、子ども向けレッスンだけでなく、大人向け英会話でも同様です。
たとえば、多くの大人向け英会話教材(たとえば Interchange シリーズなど)は、**2人の会話をベースにした“ダイアログ形式”**を基本にしており、「レストランでの注文の仕方」「ホテルのチェックイン」など、日常生活に必要な表現=BICSの反復練習に偏りがちです。

その結果、「旅行英会話はスムーズにこなせるけれど、プレゼン資料を英語で書けない」「社内の英語会議で発言できない」「アカデミックな内容になると読めなくなる」といった、“英会話はできるのに実務や学習に生かせない”という壁にぶつかることも多くあります。

文科省の英語改革は支離滅裂です。受験生を受け入れる大学側は入学後のことを考えてCALP重視の姿勢で入試問題を作ります。しかし、文科省は「英会話ごっこ」もどきのことを学校現場の先生に期待しています。教室を離れたら英語を話せる環境にない日本において、大人数のクラスでBICSごっこをやるのは愚の骨頂です。

では、CALPをどうやって育てるのか?

CALP習得には、以下のような意識的な語彙トレーニングと読解・表現の練習が不可欠です:
学術的語彙の習得(例:contrast, analyze, consequence, interpret)

ー長文読解と要約練習
ー論理的な英文ライティングの指導
ー教科横断的な英語学習(CLIL的アプローチ)

BICSとCALPの橋渡しに最適な語彙教材:4000 Essential English Words

その中でも、特に私が効果を実感している教材が、Paul Nation著の『4000 Essential English Words』シリーズです。
この教材は、**日常会話でよく使われる基本語彙(=BICS)**から、**アカデミックな文脈でも頻出する語彙(=CALP)**まで、段階的かつ系統的に習得できる構成になっています。
すべての単語に簡潔な定義とイラスト、例文が付属

ー単語リストの丸暗記ではなく、文脈での意味理解と運用練習ができる
ーネイティブの小学生〜中学生レベルの読解にもつながる語彙が豊富
ーさらに特筆すべきは、各ユニットの最後に登場するショートストーリーの存在です。

これらの物語は、小学生レベルの学習者にもわかりやすい内容ながら、単語の「意味」だけでなく「使い方」まで自然に身につくよう設計されています。そしてこの物語の文体にも、CALPを意識した配慮が見られます。
たとえば:

Your stepsister wants flowers. → Your stepsister desires flowers.

Soon she saw a group of men. There were twelve men. → It consisted of twelve men.


といったように、簡単なBICSレベルの文を、より学術的な語彙や構文に置き換えて表現しているのです。

これにより、学習者は内容理解に過度な負担をかけることなく、難易度の高い語彙に集中して取り組むことができます。
「意味はわかるけど、こんな言い方もできるんだ」という形で、BICSとCALPの間にある“語彙の壁”を少しずつ乗り越えていける——これこそがこの教材の大きな魅力です。

英語環境にいてもCALPは自然には育たない

英語圏で生活していても、家庭で使われる英語は多くがBICSです。
また、英語が話せるからといって、抽象語彙や論理構文を自動的に獲得できるわけではありません。
だからこそ、CALPを育てるには戦略的な語彙レッスンが必要なのです。

CALP習得には「母語の力」も不可欠

海外のインターナショナルスクールに通っているお子さんで、「英語ができるようになったはずなのに、授業内容が理解できない」「作文が弱い」と感じるケースは少なくありません。その原因の一つに、日本語=母語の土台が育っていないことがあります。

実は、学術的な言語能力(CALP)の発達は、母語での言語力と思考力に強く依存しています。
日本語で「要約する」「比較する」「抽象的に説明する」などの力が育っていなければ、英語でそれを表現することはさらに難しくなるのです。

つまり、たとえ環境が英語中心であっても、母語である日本語の読解力・語彙力・表現力をおろそかにしてしまうと、英語のCALPも伸び悩んでしまうという現象が起こります。

これは「2つのバケツに同時に水を注ぐ」というイメージに近いです。
母語の器が大きく、思考の枠組みがしっかりしている子ほど、英語のCALPも早く深く吸収できる傾向があります。

英会話エスティームでは、CALP強化に特化した語彙・文法・構文レッスンを提供しています

金沢市にある英会話エスティームでは、こうした背景をふまえ、BICS偏重から脱却し、将来の学術的・実務的英語力(CALP)を育てるための完全個別レッスンを行っています。
海外のインターナショナルスクールに通っているお子さん、帰国子女、英語環境にいるけれど「伸び悩み」を感じている方に最適な内容です。
ー4000 Essential English Wordsなど実証済みの語彙教材を活用
ー生徒一人ひとりの課題に応じたオーダーメイドカリキュラム
ー英検1級・Cambridge CPE所持講師による本質的なサポート

無料相談・体験レッスンも随時受付中ですので、「話せるのに伸びない」英語力に不安を感じている保護者の方は、ぜひ一度ご相談ください。