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IPA(国際発音記号)を知らずに音読しても意味がない理由|正しい発音と音読練習のすすめ

「IPA(国際発音記号)を知らずに音読しても意味がない理由|正しい発音と音読練習のすすめ」

1 音読ブームの落とし穴|正しい発音なしでは効果ゼロ

最近、英語学習において「音読」の重要性が盛んに取り上げられています。確かに音読は、語彙・文構造・リズム感を身につける上で非常に効果的です。しかし、正しい発音が伴っていなければ、その効果はゼロどころかマイナスになることもあるのです。

例えるなら、フォームの狂ったピッチングを何百球と投げ込む野球練習のようなもの。うまくならないどころか、間違った動作が癖になり、故障の原因にさえなります。英語の音読も同じです。

教育現場では「音読しよう」と声を上げる教師は多いのに、そもそもの発音指導が行われていない。この重大な矛盾こそが、日本の英語教育の迷走の根本原因なのです。

2. IPA(国際発音記号)とは?|なぜ学ぶべきなのか

IPA(International Phonetic Alphabet)とは、すべての言語の音を正確に表すために使われる国際的な発音記号です。英語の辞書では、単語の横に /ˈdelɪkɪt/ のように記載されています。

しかし、日本の教育現場ではこのIPAを学ぶ機会がほとんどありません。主な理由は次の通りです:

学校の先生がIPAの教え方を知らない
時間がかかる
電子辞書の音声で済ませてしまう風潮がある

このように発音の「読み方」が無視された結果、発音記号を理解しないまま音読を繰り返す学習者が多く生まれています。これは極めて危険な学習法であり、発音記号を理解せずに音読しても効果は得られません。

3. 発音を誤るとどうなるか|「delicate=デリケート」では通じない

例えば、"delicate" という単語を正しく発音できますか?
多くの日本人学習者は「デリケート」と発音しますが、それではネイティブに通じません。

正しい発音は /ˈdelɪkɪt/ であり、最後の「cate」の部分は「ケイト」ではなく「キット」に近い音になります。

このようなカタカナ発音のまま音読を続けても、誤った音の癖が定着するだけで、リスニングにもスピーキングにも悪影響を及ぼします。間違ったまま反復する音読ほど、危険な学習法はありません。

4. 一度ついた癖は直せない?|私のクラシックギター体験から

私は長年クラシックギターを弾いていますが、初心者の頃に誤った右手フォームを教えられ、それが長く癖となって苦労しました。
新しい先生には「その癖を直すには、しばらく曲は弾けません」とまで言われたほどです。

最終的には手首の骨折とリハビリを経て、ようやく正しいフォームを身につけることができました。

この体験から学んだのは、間違って身についた動作は、正すのに途方もない努力と時間がかかるということ。英語の発音でも、全く同じことが言えます。

5. 英語は例外だらけの雑種言語|フォニックスだけでは限界がある

英語は、ドイツ語・フランス語・ラテン語・ギリシャ語・イタリア語など、**多くの言語が混ざり合った“雑種言語”**です。

例えば、ドイツ語は綴りと発音の対応が非常に規則的ですが、英語はそうではありません。

plumber:bは発音しない
cupboard:「カップボード」と読めば完全に誤り
early:「イアリー」と読む小学生は少なくない
rapprochement / entrepreneur:綴りと実際の音は完全に別物

こうした例外的な単語を正しく読むには、フォニックスだけでは限界があるのです。IPAを理解していれば、どんな例外的な発音にも対応できます。小学校高学年〜中学生には、段階的にIPAの導入が必要と考えています。

6. 発音記号を教えられない先生に注意|選ぶべき英語教師の基準

ここで重要な指摘をしておきます。IPAを教えられない先生から英語を学ぶのは絶対に避けるべきです。ネイティブスピーカーであっても、多くの英会話講師は英語教授法を正式に学んでおらず、IPAの知識すらない場合も少なくありません。

そのような指導者に習っても、発音の矯正は不可能です。英語を学ぶなら、まず「その先生がIPAを教えられるかどうか」を確認しましょう。

イギリスの語学学校では、IPAを指導できるのは当たり前です。なぜなら、教える側も正規の教育訓練を受けているからです。

7. 英会話エスティームの取り組み|正しい発音を基礎から指導

私が運営する 英会話エスティーム(Kanazawa)では、開業当初から一貫して、全ての学習者にIPAの基礎から丁寧に指導しています。年齢やレベルに関係なく、最初に「正しい発音の土台」を築くことが、将来的な英語力に大きく影響するからです。

音読が流行している今だからこそ、「発音指導なしの音読」は極めて危険であるという事実を、もっと多くの学習者と指導者に伝えていきたいと思います。